「成果を出すリーダーにはどんな条件が必要だろう?」──経営者やリーダー層なら一度は考えたことがある問いではないでしょうか。カリスマ性や強いリーダーシップだけでは組織は持続的に成長しません。そこで注目されるのが、ジム・コリンズが提唱した「第五水準リーダー」という考え方です。
一見すると控えめで謙虚。しかし同時に、断固たる意志をもって成果を追求する。この両立こそが、企業を「よい企業」から「偉大な企業」へと成長させる原動力になるのです。本記事ではその定義と特徴を紹介し、日本企業や女性リーダーにどう活かせるかを解説します。
第五水準リーダーの定義と特徴|Jim Collinsの理論と日本的解釈
「第五水準のリーダー(Level 5 Leader)」という概念は、経営学者ジム・コリンズ(Jim Collins)が著書『ビジョナリー・カンパニー2(Good to Great)』で提唱しました。これは最も成果を出すリーダーの在り方を示すものです。このページでは定義と特徴を紹介し、日本企業や女性リーダーとの親和性についても考察します。
リーダーシップの5つの水準とは
ジム・コリンズは、企業の成功には「適切な人材によるリーダーシップ」が不可欠であると説きました。そして、リーダーシップには次の5段階があると定義しています。
水準 | 説明 |
---|---|
第1水準 | 有能な個人:知識・スキルを持ち、良い仕事をする |
第2水準 | 貢献するチームメンバー:協調性があり、チームで成果を出す |
第3水準 | 有能なマネジャー:人材と資源を効率的に管理する |
第4水準 | 効果的なリーダー:ビジョンを掲げ、組織を前進させる |
第5水準 | 謙虚さと意志の強さを併せ持ち、永続的な成功を築く |
第五水準リーダーの2つの中核要素
- 成功はチーム・運・部下のおかげだと考える
- リーダー個人ではなく、会社や組織の継続的成功に焦点を置く
- 後継者育成に力を入れ、退任後も組織が強くあることを願う
- 一見控えめだが、芯の通った意志を持っている
- 自分の名前や肩書きではなく、成果で語る
なぜ女性と第五水準リーダーは相性がよいのか

第五水準リーダーの核は「謙虚さ」と「強い意志」です。これは“声が大きいリーダー”ではなく“周囲を活かすリーダー”に近い姿です。
さらに、共感力や傾聴力、育成志向を持つ女性は、このスタイルと非常に親和性があります。たとえば、
- 周囲を巻き込む力はあるが、前に出すぎない
- 成果をチームに還元し、自分の評価に執着しない
- 長期的視点で人を育て、支えることに喜びを感じる
つまり、こうした資質は「成功を他者の力と捉え、自分の責任を引き受ける」という第五水準リーダーの特徴と重なります。
日本企業における第五水準リーダーの可能性
日本では、カリスマ的なリーダーよりも「組織を支える努力家」が評価されやすい文化があります。そのため、第五水準リーダーの資質である謙虚さや組織貢献は、日本的経営と相性が良いのです。
一方で、女性リーダーに多く見られる共感力や協調性は、第五水準に求められる要素とも一致します。つまり、日本企業において女性から第五水準リーダーを輩出することは大きな強みになります。
EOSの視点からみた第五水準リーダー
これまで第五水準リーダーはCEOの資質として語られることが多くありました。しかし、中小企業では経営チーム全体に必要な力です。EOS(Entrepreneurial Operating System)は、この資質をチーム全体に浸透させる仕組みを提供します。
- L10ミーティングで謙虚さを持ちながら建設的に議論する
- 石(Rocks)で断固たる意志をもって重要目標をやり抜く
- スコアカードで成果を見える化しチーム全体の責任を明確にする
このように、EOSを導入することで「第五水準リーダー像」が経営者一人ではなく経営チーム全体で再現されます。
まとめ:第五水準リーダーとEOSの接点
第五水準リーダーは「謙虚さ」と「強い意志」という特性を両立させたリーダーです。従来はCEOの資質とされましたが、今では経営チーム全体に求められる力です。
さらに、EOSはこの資質を組織に再現する仕組みを持ちます。L10ミーティングで謙虚な議論を重ね、Rocksで意志をもって前進し、スコアカードで成果を可視化するのです。これにより「一人のカリスマに依存しないリーダーシップ」が実現されます。
書籍紹介
第五水準リーダーを理解するには、リーダーシップ研究の金字塔『ビジョナリー・カンパニー2』が欠かせません。ジム・コリンズは、偉大な企業へ飛躍したリーダーを調査し、カリスマ性よりも「謙虚さと強い意志」の両立が重要だと示しました。経営者やリーダー層は必読の一冊です。
▶ 『ビジョナリー・カンパニー2 飛躍の法則』
ジム・コリンズ 著
また、そのリーダー像を中小企業経営で再現可能にするのがEOSです。公式ガイドブック『TRACTION』には、L10ミーティング、石(Rocks)、スコアカードといったツールが体系的にまとめられています。EOSは「第五水準のリーダーシップ」をチーム全体で育てる仕組みといえるでしょう。
▶ 『TRACTION』ビジネスの手綱を握りなおす 中小企業のシンプルイノベーション
ジーノ・ウィックマン 著