「部下がなかなか育たない」「やる気が感じられない」「自分で考えて行動してくれない」――。こうした悩みを抱える女性リーダーを、どう支援していくか。その鍵となるのが、LMA EOSという女性リーダー育成に不可欠なマネジメントの基本概念です。EOS(Entrepreneurial Operating System)では、「Lead」「Manage」「Accountable」という3つの要素で構成されるLMAが、リーダーに求められる重要な機能とされています。
LMAとは、部下を持つ立場にあるリーダーが果たすべき3つの機能「Lead(導く)」「Manage(管理する)」「Accountable(責任を持たせる)」を指します。EOSでは、肩書きに関わらず人を動かす立場にある限り、この3機能を果たすことが求められます。
近年、女性リーダーが活躍する場面が増える一方で、リーダーシップやマネジメントに自信を持てず苦しむケースも少なくありません。本記事では、女性リーダー育成の支援者として「LMAをどう伝え、どう実践へ導くか」に焦点を当てて解説します。
LMAとは?チームを動かす3つのリーダー機能

LMAとは?チームを動かす3つのリーダー機能
女性リーダーを育てるうえで重要なのが、「何をすれば“リーダーらしく”なれるのか」という指針を明確にすることです。
EOS(Entrepreneurial Operating System)では、部下を持つ立場にあるリーダーが備えるべき機能として、「LMA(Lead, Manage, hold Accountable)」を定義しています。
Lead(導く) | Manage(管理する) | Accountable(責任を持たせる) |
---|---|---|
ビジョンや価値観を繰り返し伝え チームを同じ方向に導く | 業務の仕組み化・見える化を行い 進捗や成果を継続的に把握する | 役割と成果を明確にし 自律的な行動を促す |
LMAは、チームを機能させ、成果を生み出すために必要不可欠な3つの基本的なマネジメント機能であり、これを伝え・育てることが、女性リーダー育成における大きなポイントとなります。
リーダー機能①|Lead(導く)
女性リーダーの育成において、「Lead(導く)」力は最初に意識して身につけてほしい重要なスキルです。
ここでいうLeadとは、単に指示を出すことではなく、ビジョン・目標・価値観を繰り返し伝えることで、チームを同じ方向に向かわせる力を指します。
EOSでは、経営チームが掲げる「10年ビジョン」や「マーケティング戦略」「四半期の石」などの重要指針を、リーダーが現場へ浸透させることが求められます。
女性リーダーがこれを担えるようになるには、まず「なぜこのビジョンが大事なのか」を自分の言葉で語れるようになる訓練が有効です。
自信を持ってチームを導く力は、一朝一夕では身につきません。日々の対話・行動・会議などあらゆる場面で、繰り返しビジョンを伝える練習をサポートしていくことが、育成側に求められます。
リーダー機能②|Manage(管理する)
女性リーダーの育成において、「Manage(管理する)」力は、チームを安定して機能させる土台作りとして重要です。ここでいう管理とは、単に人を見張ることではなく、業務の流れを仕組み化し、進捗や成果を見える化する力を指します。
EOSでは「スコアカード」や「プロセス整備」「週次ミーティング」といったツールを用いて、リーダーがチームの行動と結果を定期的にチェックする文化を築きます。
女性リーダーにこれを習得させるには、まず“属人化”を防ぐ視点を持たせることが第一歩です。
丁寧に仕事をこなす女性リーダーほど、つい自分一人で抱え込みがちです。「任せる前に整える」「整えてから任せる」というManageの基本を伝え、プロセスや仕組みの見える化をサポートすることで、安心して管理業務を担えるようになります。
リーダー機能③|Accountable(責任を持たせる)
女性リーダーの育成で最もつまずきやすいのが、「Accountable(責任を持たせる)」というリーダー機能です。責任を与えるというと、厳しく詰めたり、追い込んだりするように受け取られがちですが、EOSでは“Lead(導く)”と“Manage(管理する)”があってこそ責任が成立すると考えます。
Lead(導くこと) + Manage(管理すること) = Accountability(責任を持たせること)
― 『How to Be a Great Boss』より
部下に責任を持たせるためには、「何を期待されているのか」「何ができたらOKなのか」を明確にしたうえで、行動と結果を継続的に見守る姿勢が不可欠です。
女性リーダーにとっては、「厳しくすることへの抵抗感」や「自分で背負ってしまう傾向」から、Accountableの力を発揮しにくいケースも少なくありません。
だからこそ、育成の段階では、責任を“押しつける”のではなく“共有する”感覚を伝えることが大切です。
「部下に任せることが、信頼の表れであり、育成の一環である」という視点を育むことで、自律を促し、強いチームを育てるリーダーへと成長させていくことができます。
こんな時こそLMAが必要です
女性リーダーの育成に携わる中で、「責任あるポジションに就いたはずなのに、なぜかチームが機能しない」「本人の頑張りは見えるのに、成果が上がらない」という声を聞くことがあります。
その原因の多くは、LMAの3つの機能がうまく使われていないことにあります。本人の能力不足ではなく、「どうチームを導き、どう管理し、どう責任を持たせるか」が曖昧なままだと、せっかくのリーダーシップが空回りしてしまうのです。
特に女性リーダーの場合、部下に気を遣いすぎてLeadが弱くなる、完璧にやろうとして抱え込みManageが機能しない、責任を委ねることに躊躇してAccountableが曖昧になるといった傾向が見られます。
よくある女性リーダーのつまずき
- 方向性を示しているつもりでも、伝わっていない(Lead不足)
- 日々の業務を管理しきれず、個人プレー化している(Manage不足)
- 責任の所在が曖昧で、決定や改善が進まない(Accountable不足)
このような時にこそ、育成者がLMAの観点で状況を整理し、本人の行動ではなく「リーダー機能」に焦点を当てたフィードバックを行うことが効果的です。
LMAは、リーダーの努力を“型”として捉え直し、「どこが足りていないのか」「どうすればチームが動くのか」を言語化するツールでもあります。
「部下が育たない」と感じたときこそ、LMAの視点でリーダーを支援する絶好のタイミングです。
LMAの実践とは何をすることなのか?
LMA(Lead, Manage, hold Accountable)は概念として理解するだけでは不十分で、日々の現場で“行動”として実践できてこそ意味を持ちます。特に女性リーダーにとっては、LMAの実行が「自分らしさを失う」ように感じることもあり、慎重な支援が必要です。
育成する側としては、「何をすればLeadになるのか?」「どのようにManageすればよいのか?」「どうすればAccountableが生まれるのか?」を、明確に示しながら、現場でのトライを積み重ねさせることが重要です。
日常業務に落とし込むLMAの行動例
L(導く) | M(管理する) | A(責任を持たせる) |
---|---|---|
毎日の朝礼でビジョンを語る行動で価値観を体現する | プロセスの修正や更新を繰り返し属人化をなくす | 5-5-5ミーティングや1on1で 役割・期待値・実行状況をすり合わせる |
📌 5-5-5ミーティングとは?
EOSで推奨されている定期的な1on1面談の仕組みです。以下の3つの観点をそれぞれ5段階で確認しながら対話を行います:
- GWC(Get it / Want it / Capacity to do it)
- コアバリュー(自社の価値観との一致)
- 責任(役割や成果への貢献度)
上記のように、LMAは特別なことではなく、日々の業務に紐づけて「何をすれば良いのか」を具体化してあげることが、女性リーダー育成には欠かせません。
また、「責任を持たせる(Accountable)」は、単なるプレッシャーではなく、導いて(Lead)管理して(Manage)きたからこそ生まれる自然な責任感であることを、繰り返し伝えることも大切です。
LMAを社内に浸透させるには?
女性リーダーを育成しても、LMAが個人のスキルとして終わってしまうと、組織に定着しません。重要なのは、LMAを社内文化として“当たり前のマネジメントの型”にしていくことです。
特に女性リーダーにとっては、LMAを「自分なりにどう実践すればよいか」が明確でないと、自信を持って使いこなすことが難しくなります。
そのため、育成者側には、“個人任せにしない仕組み”の整備が求められます。
① アカウンタビリティチャートで責任を明文化する
まずは、役割と責任を明文化する「アカウンタビリティチャート」を全社的に整備しましょう。
女性リーダーにとっても、「自分が何を期待されているのか」が明確になることで、LMAの実行が格段にやりやすくなります。
② スコアカードと週次MTGで行動を見える化する
LMAのManageとAccountableは、数字と対話の繰り返しで定着します。
週次ミーティングでスコアカードを用い、行動と成果を継続的にチェックしていく仕組みを整えることで、女性リーダーが“管理する力”を自然と身につけられます。
③ 育成と評価を連動させる
5-5-5ミーティングや1on1、四半期レビューなどを活用し、LMAの実行度を評価項目に組み込むことで、リーダー自身も「何を伸ばせばいいか」が分かりやすくなります。
努力が可視化され、成長実感を得やすくなる仕掛けづくりが重要です。
LMAは一度教えて終わりではありません。仕組みとして根づかせ、誰もが使える共通言語にすることで、女性リーダーも周囲も育ちやすい環境が整います。
まとめ|LMAでチームを導ける女性リーダーを育てよう
女性リーダーが「部下を育て、チームを動かす」存在になるには、感覚や性格だけに頼らず、再現性のあるマネジメントの型=LMAを身につけることが不可欠です。
LMAとは、Lead(導く)・Manage(管理する)・Accountable(責任を持たせる)という3つのリーダー機能。
これらを単なる理論で終わらせず、実践を通じて「型化」し、仕組みとして社内に根づかせることで、女性リーダーの育成は大きく前進します。
特に人を気遣い、自分のやり方に悩むことの多い女性リーダーには、LMAという明確な指針が“自信”につながります。「できていない」のではなく、「やり方を知らないだけ」だった、という気づきが成長のきっかけになるはずです。
育成者である皆さんが、LMAを言語化し、行動に落とし、日常の中で支援していくことこそが、
女性リーダーが自らの力でチームを導いていける環境をつくる第一歩です。
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