「この業務、結局誰が責任を持つの?」「なんとなく自分の仕事じゃないと思っていた」──そんな“責任の曖昧さ”が、チームの停滞や人材育成の妨げになっていませんか?
特に、リーダー職に就く女性が増えている今、役割と責任を明確にすることは、信頼されるリーダーへと成長するために不可欠です。ですが、従来の組織図では、役割が人に依存していたり、責任の所在がぼやけていたりするケースが多く見られます。
そこで注目したいのが、EOS(Entrepreneurial Operating System)で使われる「アカウンタビリティチャート」です。このチャートは、単なる組織図ではなく、“誰が何に責任を持つか”を明確にし、任せる文化・育てる文化を根づかせるための構造設計ツールです。
この記事では、従来の組織図とアカウンタビリティチャートの違いを比較しながら、特に女性リーダー育成においてなぜ導入すべきなのかを具体的に解説します。
曖昧な責任がチームを迷走させる
「誰が最終的に責任を持っているのか分からない」「言った・言わないで仕事が止まっている」――こうした混乱が現場で頻発していませんか?責任の所在が曖昧な組織では、メンバーが“自分ごと”として業務に向き合いにくく、トラブルや停滞の温床になります。
特に、女性リーダーが責任あるポジションに就いた際、周囲が遠慮や期待値の曖昧さから、十分な権限移譲や判断支援を得られないケースも少なくありません。だからこそ、組織全体で「責任の見える化」を進める必要があるのです。
アカウンタビリティチャートとは?
アカウンタビリティチャートとは、EOS(Entrepreneurial Operating System)で用いられる組織構造図です。従来の「組織図」とは異なり、肩書きや上下関係ではなく、“役割と責任”にフォーカスして設計されます。
誰が何の成果に責任を持っているのか。明確な期待値を示すことで、曖昧な責任や属人的な判断を排除し、誰もが納得できる形で“任せる”文化を育てます。
組織図とアカウンタビリティチャートの違い
以下の表で、違いを整理してみましょう。
項目 | 従来の組織図 | アカウンタビリティチャート |
---|---|---|
主な目的 | 上下関係・部署構成の可視化 | 成果責任・役割の明確化 |
構成基準 | 肩書き・所属部署 | 成果に必要な役割 |
視点 | 人中心 | 構造が先、人はあと |
責任の明確さ | 責任者が不明確、責任が曖昧 | 「誰が最終責任者か」を明記 |
人の割り当て方 | 複数人が同じ役割に割り当てられる | 1役割=1人。兼任OK、分担NG |
文化への影響 | 指示待ち文化に陥ることも | 当事者意識と自律性が育つ |
更新頻度 | 固定化しやすい | 戦略や成果に応じて更新 |
主な目的の違い
従来の組織図は、主に上下関係や部署構成を明確にするために作成されます。誰が誰の上司で、どの部門に所属しているかを視覚的に示すことが目的です。
一方、アカウンタビリティチャートの目的は、「誰が何に責任を持っているか」を明確にすることです。役職や部署よりも、成果や責任領域にフォーカスして設計されます。
構成基準の違い
組織図は一般的に、肩書きや所属部署に基づいて構成されます。既存の人材にあわせて作られるため、必要な機能が抜け落ちることもあります。
対して、アカウンタビリティチャートでは「成果を出すためにどんな機能が必要か」から出発します。構造を先に設計し、その後に適切な人を配置するのが原則です。
責任の明確さの違い
従来の組織図では、「誰がこの仕事の最終責任者か」が曖昧になりやすく、問題が発生した際に責任の所在が不明確なケースも見られます。
アカウンタビリティチャートでは、各機能ごとに1人の最終責任者を明記します。「最終的に成果を出す人」が決まっているため、意思決定と実行がスムーズになります。
視点の違い
従来の組織運営では「この人がいるからこの部署を作ろう」というように、人を起点として構造を考えることが多くあります。
EOSでは「構造が先、人はあと」という考え方を重視します。必要な役割や成果から先に構造を設計し、そこに最も適した人を配置することで、戦略と人材が一致します。
人の配置・割り当ての違い
組織図では、1つの役割を複数人で「分担」しているケースが多く見られます。しかしこの場合、誰が本当に責任を持つのかが曖昧になりがちです。
アカウンタビリティチャートでは「1役割=1人」が原則です。兼任は可能ですが、分担は不可。責任の所在が明確になることで、任される側も自覚と主体性を持ちやすくなります。
組織文化への影響
責任の曖昧さは、結果として「言われたことだけをやる」指示待ち文化を生みやすくなります。自ら動く社員が育ちにくい環境になります。
アカウンタビリティチャートを導入することで、「自分の成果は自分で出す」という当事者意識と自律性が育まれ、チーム全体の生産性が向上します。
更新頻度の違い
従来の組織図は一度作ると長期間そのまま使われ、現場や戦略の変化に合わなくなることがあります。特に成長中の企業では、役割のズレが大きな足かせになります。
アカウンタビリティチャートは、四半期や事業計画ごとに見直すことが推奨されます。役割と責任の再定義を習慣化することで、常に「今の最適な体制」を保つことができます。
なぜ女性リーダーに必要なのか?

女性リーダーの多くが、組織内で「調整役」「潤滑油」として期待されることがあります。しかし、曖昧な立場のままでは、責任ある意思決定ができず、信頼されるリーダー像を築きにくいのが現実です。
アカウンタビリティチャートを活用することで、「自分の役割と責任は何か」を明文化でき、同時に周囲もその立場を認識しやすくなります。これは、女性リーダーが「任される存在」として育つ土壌を作るうえで非常に重要です。
導入で変わる“任せ方”と“育て方”
責任が明確になることで、上司や経営層は「結果への責任を持たせて、口を出しすぎない」マネジメントが可能になります。プロセスを細かく管理せず、信じて任せる環境が整うため、女性リーダー自身も意思決定力を磨き、チームをリードする自覚が芽生えます。
同時に、部下や周囲も「何を期待されているか」が分かりやすくなり、チーム全体のパフォーマンスも上がっていきます。
まとめ|責任の見える化が、信頼と育成の起点になる
組織において「責任のあいまいさ」は、見えないリスクです。特に、女性リーダーが活躍する土壌を整えたい企業にとって、アカウンタビリティチャートは有効な“構造改革”ツールとなります。
構造を整え、人を育てる。責任の見える化から、任せる力、育てる力が育ちます。
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