「きっとわかっているだろう」「やっぱり理解しているはず」「たぶん伝わっているだろう」――リーダーが使う“だろう言葉”に、部下は応えてくれません。
なぜなら期待は100%伝わっていないからです。リーダーは「期待している」と思っていても、部下には曖昧な指示にしか聞こえず成果につながらないのです。
特に共感力の高い女性リーダーは、相手が理解している“だろう”と無意識に思い込みやすい傾向があります。つまり、経営者が育成するときに強く意識すべきポイントなのです。
そこで重要になるのが、EOS(起業家型組織運営システム)のリーダーシップ実践のひとつ「期待を明確にする」という考え方です。
📘 EOS(Entrepreneurial Operating System)とは?
アメリカの中小企業で広く導入されている経営システムです。ビジョンを明確にし、実行力を高める仕組みを提供します。さらに、採用・育成・仕組み化を通じて組織を成長させる実践的なフレームワークです。
期待を明確にしないとどうなるか?
「空気を読んでくれるだろう」と思ったリーダーは、部下が違う方向に動いても気づけません。その結果、チームの動きはバラバラになります。
期待が曖昧なままでは、部下は優先順位を誤り、成果は安定しません。さらにリーダーは「やる気がない」と誤解し、関係性まで悪化させてしまいます。
結論として、問題は部下の能力ではなくリーダーが明確に伝えていないことにあります。
部下に期待を伝えるときのポイント

リーダーシップの実践において大切なのは「期待をあいまいにしない」ことです。
特に女性リーダーは気配りや優しさが先に立ち、期待をはっきり伝えきれないケースもあります。つまり、経営者が女性リーダーを育てる際には、期待を明確にする力を支援する必要があるのです。
ここでは、期待を伝える際に押さえるべき4つのポイントを紹介します。
1. ゴールを数値や期限で示す
「売上を上げて」では不十分です。
「今月中に売上100万円を目指そう」と数値と期限で示すことで、部下は「何を」「いつまでに」やるのかを理解できます。つまり、成果につながる行動に変換できるのです。
2. プロセスの基準を共有する
結果だけでなく「どのように達成するか」も伝えることが重要です。
「もっと丁寧に」では解釈が人によって異なります。一方で「お客様に3回確認してから対応する」と具体的に示せば、期待がそろい成果が安定します。
3. 繰り返し伝える
期待は一度伝えただけでは忘れられてしまいます。
オンボーディングやプロジェクト開始時だけでなく、週次ミーティングや月次レビューで繰り返し確認しましょう。つまり「伝え続ける仕組み」を持つことが重要なのです。
4. 数値や事実で裏づける
「もっと頑張って」では部下は何を基準に動けばいいかわかりません。
そのため、スコアカードや石(Rocks)、ビジョントラクションシート(V/TO)などEOSのツールを活用します。こうすれば「期待」が数値や事実で裏づけられ、誰が見ても同じ基準で判断できるのです。
あるある|期待を明確にしない現場
- 「言わなくてもわかっているだろう」と思っていたら、部下は全く違う方向に動いていた。
- クレーム対応で「うまくやって」と言った結果、担当者ごとに判断がバラバラになり、混乱が広がった。
- 会議で「もっと頑張ろう」と言ったものの、具体的に何を頑張ればいいのか誰も理解していなかった。
EOSツールで「期待を明確にする」
EOSでは「期待を明確にする」ことを徹底する仕組みがあります。つまり、リーダーの感覚や気分に頼らず、全員が同じ基準で理解できるようにするための仕組みです。
そのため、以下のツールを活用すれば期待が可視化され、再現性のあるマネジメントが可能になります。
EOSツール | 期待を明確にする場面 | 具体例 |
---|---|---|
アカウンタビリティチャート | 役割と責任の明確化 | 「営業部長=売上責任」「CS=顧客満足度」 |
スコアカード | 期待を数字で示す | 「受注件数10件」「顧客満足度90%以上」 |
LMA | 部下を導き、責任を持たせる | 「結果に責任を持つのはあなた」 |
まとめ|リーダーは「期待を明確に伝える責任」を持つ
リーダーが「きっと伝わっているだろう」と思っても、部下には伝わっていません。つまり期待は100%伝わっていないと考えるべきです。
数値・期限・基準を明確にし、繰り返し確認することで、部下は安心して動けるようになります。
さらにEOSツールを使えば、リーダーの頭の中にある期待を仕組みとして見える化でき、組織全体で共有できます。
女性リーダーを育てたい経営者は、この「期待を明確にする力」を徹底的に支援してください。あいまいな期待では成果につながりません。明確に伝えるリーダーを育てることが、組織全体の成長を加速させます。
書籍紹介
『TRACTION』は、EOS(Entrepreneurial Operating System)の公式ガイドブックです。L10ミーティング(10点満点ミーティング)、石(Rocks)、スコアカードなど、組織を成長に導くためのツールが体系的に学べます。
「期待を明確にする」ことを仕組み化したい経営者に最適な一冊です。
▶『TRACTION』ビジネスの手綱を握りなおす 中小企業のシンプルイノベーション
ジーノ・ウィックマン 著