サイロを壊す”交差する役割”|EOSでクロスファンクショナルに強くなる

白いジャケットに赤いインナーを着た女性リーダーが笑顔で前を見つめている。サイロを壊し、交差する役割を担うクロスファンクショナルな強さをイメージした写真。 EOSツール実践ガイド

サイロを壊す“交差する役割”——。部署ごとに情報や責任が分断され、互いに押し付け合う「サイロ化」は、多くの中小企業が直面する課題です。クロスファンクショナル(部門横断的な働き方)が必要だと分かっていても、実際には「他部署のせい」「自分の担当ではない」と壁ができ、成果が伸び悩みます。

本記事では、EOS(起業家型組織運営システム)のアカウンタビリティチャートを軸に、サイロ化を防ぎ、組織全体の成果を高める方法を解説します。

なぜ部門横断が必要なのか?

サイロとは、本来は穀物を貯蔵する倉庫を意味しますが、ビジネスでは「部署ごとに閉じて情報や責任が分断された状態」を指します。営業・現場・バックオフィスがバラバラに動けば、全社的な成果につながらないのは当然です。

一方、クロスファンクショナルとは「部門横断的な働き方」のこと。部署や役割を超えて協力し、組織全体で課題を解決するスタイルを意味します。現代の中小企業においては、この力が欠かせません。

サイロ化の問題と弊害

日本企業では、部署をまたいだ課題解決が苦手という傾向があります。問題が起きると「誰かのせい」「他チームのせい」と責任を押し付け合い、本質的な解決が遅れてしまうのです。これこそがサイロ化の典型的な姿です。

サイロ化あるあるEOSでの解決策(アカウンタビリティチャート)
部署ごとに目標がバラバラで、全社的な成果につながらない機能・役割・指示系統を明示し、全員が同じ組織の方向性を共有する
「それはうちの部署の仕事じゃない」と押し付け合いが起きる各従業員の結果責任を明確化し、誰が最終責任を持つか一目でわかるようにする
情報が縦のラインでしか伝わらず、現場の課題が他部門に届かない最終責任者に正しく・早く情報が届く仕組みを整える。例:バックオフィスのスタッフが顧客クレームを発見した場合、直属上司を経由してもよいし、必要なら直接カスタマーサービス責任者へ伝達してもOK。
部署間の縄張り意識や「自分の領域を守る」発想が強い成果責任ベースの仕組みなので、縄張りや分裂を生む余地がなくなる
問題が発生すると「営業のせい」「現場のせい」と責任転嫁になる責任の所在が明確なので、個人や部署のせいにせず、構造で問題を捉えられる
サイロ化の弊害とアカウンタビリティチャートによる解決策の比較

アカウンタビリティチャートとは?

EOSのアカウンタビリティチャートは、単なる組織図ではありません。定義されるのは、機能(Function)・役割(Role)・指示系統(Reporting Structure)のみです。つまり、誰がどの成果に最終責任を持つかを明確にし、責任の押し付け合いを防ぐ仕組みです。

重要なのは、コミュニケーション構造までは縛られないことです。伝達事項は必要に応じて部署や序列に関係なく自由に伝えられ、結果として「最終責任者に正しく・早く情報が届く仕組み」が実現します。これにより、課題解決のスピードと正確性が高まり、サイロ化の弊害を取り除けるのです。

Function(機能)

アカウンタビリティチャートの基盤となるのがFunction(機能)です。これは「会社を動かすために必要な大きな機能単位」を意味します。例えば、営業、マーケティング、バックオフィス、オペレーション、人材採用などです。ここで大切なのは「誰が担当しているか」ではなく、まず会社にとって欠かせない機能は何かを洗い出すことです。

Role(役割)

次に定義されるのがRole(役割)です。各機能の中で、どのような成果を出すことが期待されているのかを明示します。例えば、マーケティング機能であれば「見込み顧客を一定数以上獲得する」、バックオフィスであれば「正確な経理処理と資金管理を行う」といった具合です。役割を明確にすることで、単なる作業分担ではなく結果責任がはっきりします。

Reporting Structure(指示系統)

最後に整理するのがReporting Structure(指示系統)です。ここでは「誰が誰に報告するのか」「最終的な責任者は誰か」を一目でわかるようにします。例えば、営業マネージャーはセールス担当者から報告を受け、最終的には営業部門全体の成果に責任を持ちます。指示系統を明確にすることで、意思決定が滞らず、責任の押し付け合いを防ぐことができます。

日本の組織図との違い

一般的な日本企業の組織図は役職ベースで描かれます。「部長」「課長」「係長」といった肩書きが縦に並び、上下関係や序列を重視する構造です。この場合、役職が高い人の承認がないと話が進まないため、スピードが遅くなりがちです。

一方、EOSのアカウンタビリティチャートは機能ベースで整理されます。肩書きではなく「何の成果に最終責任を持つのか」を定義し、責任の所在を明確にします。これにより、肩書きに縛られた曖昧な意思決定ではなく、誰が何を決めるのかが明確になり、サイロ化や責任転嫁を防ぐことができます。

女性リーダーが担う“交差する役割”

白いジャケットに赤いインナーを着た女性リーダーが笑顔で会議に臨む姿。部署間をつなぐ“交差する役割”を象徴するイメージ。

共感力や多視点を持つ女性リーダーは、部署間の壁を壊し、交差する役割を調整する“ハブ”として機能しやすい特性があります。アカウンタビリティチャートを活用することで、誰が責任者かを確認しつつ、必要に応じて相手と直接つながる。その姿勢が、クロスファンクショナルな課題解決を推進する大きな力になります。

まとめ|アカウンタビリティチャートでサイロを壊す

  • サイロ化は部署間の壁を生み、成果を奪う大きな要因となる
  • アカウンタビリティチャートは、機能・役割・指示系統を明示し、責任の押し付け合いを防ぐ
  • 日本の組織図が「役職ベース」なのに対し、アカウンタビリティチャートは「機能ベース」で成果責任を明確にする
  • コミュニケーションは縛られず、最終責任者に正しく・早く情報が届く仕組みをつくれる
  • 「越権行為とクロスファンクショナルの混同」で身動きが取れなくなる問題も、役割が明確であれば解決できる。直接伝達は越権ではなく、組織を前進させる正しい行動となる
  • 女性リーダーは交差する役割のハブとして、クロスファンクショナルに強い組織を育てられる

アカウンタビリティチャートは、単なる役割分担表ではなく、サイロ化や責任転嫁を防ぎ、正しい情報が最短ルートで責任者に届く仕組みです。役職ではなく成果責任に基づいたこの仕組みを取り入れることで、「越権かも」と迷うことなく、組織全体を動かすクロスファンクショナルな力を発揮できます。

書籍紹介

『TRACTION』は、EOS(Entrepreneurial Operating System)の公式ガイドブックです。本記事で紹介したアカウンタビリティチャートをはじめ、L10ミーティング、石(Rocks)、スコアカードなど、サイロ化を防ぎ組織を前進させるためのツールが体系的に解説されています。中小企業の経営者や女性リーダーにとって、部門横断の課題解決を推進するうえで最適な一冊です。

『TRACTION』ビジネスの手綱を握りなおす 中小企業のシンプルイノベーション
ジーノ・ウィックマン 著

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