「自分でやった方が早い」「教える時間がない」「まだ手放すのは不安」。
こうした言葉は、現場の多くのマネージャーから聞こえてくる“本音”です。
特に、責任感が強く丁寧な仕事をこなしてきた女性リーダーほど、役割を手放すことに慎重になりがちです。
しかし、リーダーが本来の“役割”に集中できるように構造を整え、明確な“ビジョン”と一致した行動に時間とエネルギーを注げる状態をつくることこそ、組織が変わる第一歩です。
誰か一人が抱え込むのではなく、チーム全体で「任せる文化」を育むことが、組織の自走と成長を生み出します。
なぜ、任せるのは難しいのか?|女性リーダーが抱える“任せられない壁”
多くの女性リーダーが「任せること」に葛藤を抱えています。それは能力の問題ではなく、思考のクセや職場環境、責任感の強さなどが背景にあることが多いのです。ここでは、任せられない原因と、それが組織にもたらす影響を明らかにします。
任せられない理由とその背景
- 自分でやった方が早い
- 教える時間がない
- 教える時間がない
- 手放すことに罪悪感がある
任せられないことで起こる悪循環
理由 | 短期的な効果 | 長期的な影響 |
---|---|---|
自分でやった方が早い | 即時対応できる | 部下が育たない、負担が集中 |
教える時間がない | 忙しさが減らない | チームが属人化 |
心配・不安 | ミスを避けられる | 信頼関係が築けない |
まだ手放すのは早い | 一見「育成中」 | 任せるタイミングを逃す |
EOSに学ぶ「任せる力」の基本と実践ステップ
EOS(Entrepreneurial Operating System)では、強い組織づくりに欠かせない「5つのリーダーシップ能力」の1つとして、“任せる力(Delegation)”が位置づけられています。
この力は、女性リーダーが本来の役割に集中し、チームを成長させるための土台ともいえる重要な要素です。
EOSの5つのリーダーシップ能力
能力 | 意味 | 女性リーダー育成との関係 |
---|---|---|
1. Simplify(単純化) | 複雑な課題や状況をシンプルに整理し、チームが理解しやすい形にする | 感情や人間関係が絡みがちな場面で、冷静に本質を見極める力を支援 |
2. Delegate(任せる) | 信頼して業務を任せ、自分は本来の役割に集中する | 育成・信頼・自立の鍵。部下を育て、リーダー自身の視野も広がる |
3. Predict(予測) | 起こりうる問題や変化を先回りして察知し、準備する | 共感力や多視点で変化に敏感な女性リーダーの強みを活かせる |
4. Systemize(仕組み化) | 業務を標準化・再現性のあるプロセスに落とし込む | 属人化を防ぎ、誰もが成果を出せる環境づくりに貢献 |
5. Structure(構造化) | 適切な組織構造・役割設計でチームが機能する仕組みを整える | “構造が先、人はあと”の原則でリーダーの混乱や重荷を軽減 |
他の4つの能力も含めたEOSの視点については、以下の記事で詳しく紹介しています。あわせてご覧ください。
👉 女性リーダーに必要な「5つの能力」|EOS『TRACTION』で語られる成長の鍵
「任せる力」を実践する5ステップ
以下では、「任せる力」に焦点を当て、実践するための5つのステップをご紹介します。

EOS(Entrepreneurial Operating System)では、「任せる力(Delegation)」は単なる業務移譲ではなく、信頼と構造のマネジメントとされています。以下の5つのステップは、任せる力を育て、チームの主体性と生産性を高めるための実践ガイドです。
1.役割の再定義:「自分の席」でやるべき仕事を明確に
まずは自分の“席(ポジション)”が担うべき責任と成果を明確にします。これはアカウンタビリティチャートにおける「正しい構造」を意識するステップです。
2.業務の整理:「任せるべき仕事」を構造的に抽出する
すべての業務を書き出し、「自分が担うべきか」「他に担える人がいるか」を“構造”の視点で判断します。これは「構造が先、人はあと」のEOS原則に基づく整理です。
ただし、任せるべき仕事が明らかになっても、「誰にでも任せてよい」というわけではありません。信頼して任せるには、その人がその役割を果たせるだけの適性と準備が必要です。無理に任せても、かえってミスや不信感を生む結果になりかねません。
3.人材のマッチング:GWCで適任者を選ぶ
その業務を理解しているか(Get it)、やりたいか(Want it)、実行できるか(Capacity to do it)を軸に任せ先を判断。これは“正しい人を正しい席に”の実践です。
4.期待値の明文化:目的・判断基準・成功の定義を示す
任せる際は「何を」「なぜ」「どうなれば成功か」を明確に伝えます。ここが曖昧だと、任せたつもりが丸投げになります。EOSでは“明確な期待値”が信頼の基盤です。
5.実行と検証:信頼しながら、定期的に測る
任せたあとは、信じて見守ることが大切です。スコアカードや定例MTGを活用し、進捗を可視化します。これにより“任せっぱなし”を防ぎ、リーダーとしての責任を果たせます。
まとめ|「任せる力」は女性リーダーを育て、会社を強くする
「任せる力(Delegation)」は、女性リーダーの成長に欠かせない能力です。
チームを動かし、自らの役割に集中するための土台になります。
任せる力が育つことで、チームの自立性が高まり、組織全体がしなやかに動くようになります。リーダーがすべてを抱える必要はありません。
「信じて託す」ことでこそ、人は育ち、チームは強くなります。
とくに女性リーダーは、共感力や細やかな配慮に優れています。
だからこそ、任せる力を持つことで、人を活かすマネジメントが可能になります。
結果として、企業の人的資本が強化され、成長スピードも加速します。
まずは「自分がやるべきこと」と「任せるべきこと」を区別することから始めましょう。
任せるリーダーが増えるほど、会社はしなやかに、そして強くなっていきます。