女性リーダーの育成が進まない。その背景には、個人の問題だけではなく、組織の構造的な問題があります。「責任があいまい」「評価が主観的」「任せ方が属人的」——これではどんなにポテンシャルのある女性がいても、その力は活かされません。
本記事では、企業の成長フレームワークであるEOS(Entrepreneurial Operating System)の考え方をもとに、「女性リーダー育成に必要な仕組み」を解説します。女性活躍を仕組みから支えたい企業にとって、大きなヒントとなるでしょう。
EOSとは?──仕組みで人と組織を強くする
EOSは、経営の6つの要素(Vision/People/Data/Issues/Process/Traction)を可視化し、組織を健全で強くするためのオペレーションシステムです。
特に注目すべきは「People(人材)」の領域にある「正しい人を、正しい席に」という考え方。これは女性リーダーの登用や定着においても極めて有効な視点です。
席(Seats)の考え方が、女性リーダーの育成を加速する

EOSでは「席」とは、役職ではなく組織に必要な“機能”や“責任のまとまり”を指します。つまり、「人に合わせた仕事づくり」ではなく「会社に必要な機能をまず定義し、それを担う人を配置する」ことが原則です。
この考え方に沿えば、女性が管理職に抜擢される際も、「なんとなく期待されて昇格した」状態を避けられます。役割の期待値が明確で、求められる成果もはっきりしているからです。
従来の配置 | EOSの配置 |
---|---|
空いたポジションに“適当な人”を当てる | 必要な役割(席)を定義し、適任者を探す |
評価・任命の基準が曖昧 | 役割・成果が明確で透明性がある |
人によって期待値がブレる | 席ごとのGWCチェックで適合を判断 |
GWCで「本当にその席に向いているか?」を見極める
GWCとは、EOSにおいて人材適性を見極めるための3つの視点です:
- G(Get it):その役割の本質を理解しているか
- W(Want it):その席を担いたいという意欲があるか
- C(Capacity to do it):時間的・スキル的な能力があるか
女性リーダー候補者がいても、GWCが不足している場合、無理に任せても定着や成果にはつながりません。一方、GWCが揃っていれば性別に関係なくリーダーとして機能しやすくなります。
スコアカードで「見えない努力」を数字に変える
女性リーダーの評価でありがちな課題が、「成果が出にくい業務」や「気遣い・調整力」などが数値化されず、評価されにくいことです。
EOSのスコアカードでは、結果だけでなく先行指標(行動・プロセス)を毎週数値化します。たとえば:
- チーム内1on1の実施回数
- トラブル未然防止の件数
- 育成面談の実施率
これにより、女性ならではの「気配り型リーダーシップ」も、しっかりと評価・可視化できるようになります。
EOSで育成が変わる。TGMでの実践から
筆者が所属する株式会社TGMでも、EOSを導入して約1年半。役職や勤続年数ではなく、「役割に合った人」を配置する文化が根づき始め、女性社員の中にもリーダー的存在が生まれつつあります。
インテグレーターとして運用を支えながら、「個人を活かすには、構造が必要」という実感を日々深めています。
まとめ:仕組みで“登用の壁”を取り払う
女性リーダー育成は、感覚や気合いでは進みません。EOSのような構造的アプローチを導入することで、登用・育成・評価の「見えないハードル」が消え、誰もが力を発揮しやすい環境が整います。
「正しい人を、正しい席に」。
このシンプルで力強い考え方が、次世代の女性リーダーを育てる土台になるのです。
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