組織で働いていると、「あの人、なんとなく合っていないかも」という違和感を覚えることがあります。多くの場合、その感覚は正しいのですが、忙しさや人間関係への配慮から見て見ぬふりをしてしまうこともあるでしょう。しかし、この違和感を放置すると、やがて組織全体に悪影響が及びます。成果が落ちるだけでなく、チームの士気まで下がってしまうのです。
特に中小企業では、一人のパフォーマンスやモチベーションの低下が全体に波及しやすく、取り返しがつかない状況を招くことも少なくありません。だからこそ、違和感を感覚だけで終わらせず、構造的に確認し、早期に対応する仕組みが必要です。
違和感を放置すると組織はどうなるか
小さな違和感を放置すると、まずは成果の低下が始まります。一方で、他のメンバーがその穴を埋めるために負担を背負い、やがて不満が蓄積します。さらに、不満は人間関係の悪化を招き、組織全体の雰囲気まで悪くなるのです。この負の連鎖は、気づいた時にはすでに深刻な状態になっていることが多いものです。
では、どうすればこの悪循環を防げるのでしょうか。その答えのひとつが、EOS(起業家型組織運営システム)のツール「GWC」です。
GWCとは?適材適所を判断するEOSの中核ツール
GWCは、従業員やメンバーが役割に適しているかを「Get it(理解しているか)」「Want it(やりたいか)」「Capacity to do it(実行できる能力があるか)」の3つの基準で判断するEOSの中核ツールです。判定はYesかNoの二択で、”Maybe”は認めません。これにより、あいまいな評価や感情に左右されない明確な判断が可能になります。
さらに、GWCは「Right Person / Right Seat(正しい人を正しい席に)」という考え方を実現するための仕組みです。つまり、その人が組織の価値観に合っているか、そして役割に適しているかを同時にチェックできるのです。
Get it(役割の理解)
まずは、その人が役割の本質や目的を理解しているかどうかです。理解不足のまま業務を続けると、判断や優先順位にズレが生じ、成果に結びつきにくくなります。たとえば、新しいプロジェクトで求められている成果物や目的を把握していないと、努力が空回りすることになります。
Want it(やりたい意欲)
次に、その仕事をやりたいという意欲があるかどうかです。スキルがあっても、やりたくない仕事では長期的な成果は望めません。また、やりたくない役割を続けるとモチベーションが下がり、周囲への影響も悪化します。意欲は本人の内面に深く関わるため、正直な自己評価が重要です。
Capacity to do it(実行能力)
最後に、その役割を遂行するための能力があるかを見ます。ここでいう能力は、スキルや知識だけでなく、時間的余裕や精神的なゆとりも含まれます。一方で、Capacityはトレーニングや支援によって改善可能です。しかし、Get it または Want it がNoの場合は、役割を変更する方が早い結果をもたらします。
違和感放置 vs GWC活用の比較
ここでは、違和感を放置した場合と、GWCを活用して適材適所を判断した場合の違いを比較します。早期発見と対応の重要性が一目でわかります。
項目 | 違和感を放置 | GWCで適材適所を判断 |
---|---|---|
課題の発見 | 問題が明確に表面化してからようやく気づくため、対応が後手に回る | 先行して役割ミスマッチを特定でき、早期に対策を講じられる |
組織の成果 | ミスマッチが長期化し、全体の成果やパフォーマンスが低下していく | 適材適所が実現し、各メンバーの力を最大限発揮できる |
チーム士気 | 不満や負担が積み重なり、チームの雰囲気や士気が徐々に低下する | 役割が明確になることで、安心感が生まれ士気が高まる |
改善までの時間 | 原因特定が遅れ、改善までに長い時間がかかる傾向がある | 判断が早く、対応スピードも上がるため改善までが短期間で済む |
女性リーダーにこそ必要な「人を見る仕組み」

女性リーダーは感覚や人間関係への配慮に優れていますが、それだけでは人材の適材適所を判断するには限界があります。GWCは、その感覚を補完し、事実ベースで判断できるようにするツールです。また、明確な基準があることで、判断に迷う時間やストレスも減らせます。
さらに、GWCは部下との面談や評価の場でも活用できます。Yes/Noでの評価結果を共有し、改善の余地がある場合はCapacityを伸ばすサポート計画を立てることも可能です。こうした取り組みは、信頼関係の構築にもつながります。
書籍紹介|『TRACTION』とは?
本記事で紹介したGWCは、EOSの公式ガイドブック『TRACTION』で詳しく解説されています。著者ジーノ・ウィックマンは、「適材適所の判断こそが組織の成長の鍵」であり、特に中小企業にとって欠かせないと述べています。感覚に頼るだけではなく、明確な基準で人を見ることの重要性を学べる一冊です。
▶『TRACTION』ビジネスの手綱を握りなおす 中小企業のシンプルイノベーション
ジーノ・ウィックマン 著