「また会議か…」「結局何も決まらない」「ただの報告会になっている」――そんな“会議あるある”に、心当たりはありませんか?
本来、会議はチームを前進させるための大切な時間。
しかし現実には、時間を浪費し、モチベーションを下げる“ストレスの場”になっているケースも少なくありません。
- 開始時間がバラバラで、だらだらと始まる
- 結論が出ずに終わり、次回に持ち越される
- 一部の人だけが話し、全体の意見が出ない
- 終わり時間があってないようなもので、次の業務が押される
- 結局「何を決めたのか」がわからない
こうした会議に共通するのは、“リズム”の欠如です。
時間も進行も曖昧なままでは、チーム全体のテンポが乱れ、会社の成長スピードまで落ちてしまいます。
アメリカの中小企業では、会議を単なる「話し合い」ではなく、経営のリズムを整える仕組みとして設計する文化があります。
それが、EOS(Entrepreneurial Operating System)で提唱される「ミーティングパルス(The Meeting Pulse)」という考え方です。
本記事では、EOSが教える「ミーティングのリズム」づくりを通じて、
会議をチームの成長を促す“仕組み”へ変える方法を紹介します。
EOS(Entrepreneurial Operating System)は、経営者やリーダーが組織をシンプルに、そして力強く動かすための実践的なシステムです。
ビジョンの共有から人材配置、会議の進め方まで、会社経営に必要な要素を「6つのコアコンポーネント」に整理しています。
世界中の中小企業が導入し成果を上げている、実践型の経営システムです。
なぜ会議がうまくいかないのか?|見直すべきは“リズム”だった
「会議なんてなくてもいいのでは?」――そう感じたことがある人も多いでしょう。
しかし、会議そのものが悪いわけではありません。問題は、リズムのない会議が組織のリズムを乱していることにあります。
会議は必要?それとも時間のムダ?
多くの企業で、会議は“必要悪”として扱われています。
たしかに、長引く会議や形骸化した打ち合わせは、生産性を下げる大きな要因です。
つまり、会議は“会社の呼吸”のようなもので、リズムを整えるために欠かせない存在なのです。
問題は、会議の存在ではなくその運営方法。
誰が、どの目的で、どんな流れで進めるのか――その“仕組み”がないまま続けていることこそが、成果の出ない会議の正体です。
なぜ会議がうまく回らないのか?
会議がうまくいかない原因は、実はシンプルです。
それは、「リズム」と「構造」が欠けているからです。
- 開催日や時間がバラバラで、習慣化されていない
- アジェンダが曖昧で、何を話すのかが明確でない
- 誰が進行するか、どこで結論を出すかが決まっていない
- 時間配分があいまいで、ダラダラと終わりが見えない
- 終わった後に、次の行動(To Do)が共有されない
このように、会議にはリズムがなく、構造がないために「何を決めたのか」が曖昧になり、
参加者が目的を見失ってしまいます。結果、会議を重ねても何も前に進まないという悪循環に陥るのです。
EOSでは、こうした状況を解消するために、「ミーティングパルス(The Meeting Pulse)」という仕組みを設けています。
次章では、このミーティングパルスの考え方と、実際のリズム設計について解説します。
ミーティングパルス(The Meeting Pulse)とは?
アメリカの中小企業で広く導入されているEOSでは、「ミーティングパルス(The Meeting Pulse)」という概念を提唱しています。
これは、会社の会議を“鼓動(pulse)”として捉え、一定のリズムで組織を動かす仕組みです。
ジーノ・ウィックマンは『TRACTION』の中で、次のように述べています。
“The Meeting Pulse is the heartbeat of your company.”
(ミーティングパルスは、あなたの会社の心臓の鼓動である。)
人の体が一定のリズムで脈を打つように、会社にも健康を保つためのリズムが必要です。
そのリズムをつくるのが、定期的なミーティングという“仕組み”なのです。
EOSが定める3つの会議リズム
EOSでは、会社のリズムを整えるために、次の3つの会議サイクルを明確に定義しています。
| 種類 | 頻度 | 目的 | 所要時間 |
|---|---|---|---|
| L10ミーティング(Weekly Level 10) | 毎週 | 課題の解決・実行の確認 | 90分 |
| 四半期ミーティング(Quarterly Session) | 90日に1回 | ビジョンと優先事項の再確認 | 1日 |
| 年間ミーティング(Annual Session) | 年1回 | 長期戦略の策定・組織の見直し | 2日間 |
この3つのリズムを継続的に回すことで、組織は“息をするように”動き続けます。
定例会議が止まると、会社のエネルギーの循環も止まる――まさに会議は会社の呼吸なのです。
L10ミーティングは「神聖な儀式」
特に週次で行われるL10ミーティングは、EOSの中でも最も重要なリズムです。
毎週同じ曜日・同じ時間・同じメンバーで開催し、90分という時間を“神聖な儀式”のように守ることが求められます。
ジーノ・ウィックマンは、L10ミーティングについて次のように語っています。
“The only reasons for missing an L10 Meeting are vacation or death.”
(L10ミーティングを欠席できるのは、休暇か死んだときだけだ。)
もちろんこれは比喩ですが、それほどまでにこの時間は大切に扱うべきという意味です。
同じ時間に、同じ流れで、同じ目的をもって会う――
この“リズムの一貫性”こそが、会社全体の安定感とスピードを生み出します。
会議の最後に「10点満点」でリズムを整える
L10ミーティングの最後には、全員でその日の会議を10点満点で採点します。
これは単なるアンケートではなく、チームの“会議の健康状態”を測るパルスチェックです。
点数が低ければ、何が機能していないのかをオープンに話し合い、翌週に改善する。
点数が高ければ、リズムが安定している証拠です。
この評価を繰り返すことで、会議の質もチームの一体感も磨かれていきます。
つまり、L10ミーティングとは「話す場」ではなく、「整える仕組み」なのです。
まとめ|整ったリズムが整った成果を生む

多くの会社では、会議が「話すための時間」になりがちです。
しかし、EOSが教えるのは「会議は仕組み」であり、組織のリズムを整えるための時間だということです。
決まった曜日・決まった時間に、同じメンバーで集まり、同じ流れで進める。
それだけで、チームには予測可能性と安定感が生まれます。
これは「信頼」と「尊重」の文化を育てる最もシンプルな方法でもあります。
時間を守り、評価で振り返り、改善を繰り返す――。
この地道なサイクルこそが、会社の成長を支える“ミーティングパルス”です。
リズムの乱れは、成果の乱れにつながります。
逆に、リズムが整えば、チームも会社も迷いなく前進していける。
次の週次ミーティングから、ぜひ“時間”にこだわってみてください。
書籍紹介
『TRACTION』は、EOS(Entrepreneurial Operating System)の公式ガイドブックです。
L10ミーティング(10点満点ミーティング)やミーティングパルスなど、「会議を仕組み化し、経営のリズムを整える」ための具体的な手法が丁寧に解説されています。
単なる会議術ではなく、“会社全体を動かす仕組み”として会議を設計する考え方が学べるのが本書の特徴です。
経営チームの連携を高めたい方、会議をもっと価値ある時間にしたいリーダーにおすすめの一冊です。
▶『TRACTION』ビジネスの手綱を握りなおす 中小企業のシンプルイノベーション
ジーノ・ウィックマン 著

