「マイルストーンとは何か?」を検索している方の多くは、プロジェクトの進め方や管理方法に悩んでいるのではないでしょうか。
現場ではこんな“あるある”が起きがちです。
- プロジェクトが長期化して、いま全体のどの位置にいるか分からない
- やるべきことが多すぎて、優先順位が曖昧になってしまう
- 報告が「終わった・まだ」だけで、到達点の基準が不明確
こうした混乱を防ぐために使われるのが「マイルストーン」です。マイルストーンを理解すれば、プロジェクトの進捗を見える化し、どこまで進んでいるかを確認できます。
しかし、それだけでは十分ではありません。なぜならマイルストーンはあくまで“通過点”であり、組織全体の優先順位や集中力を高める仕組みにはならないからです。
そこで役立つのが、EOS(起業家型組織運営システム)における「石(Rocks)」という考え方です。本記事では、マイルストーンの基本を整理したうえで、石との違いを解説し、経営やリーダー育成の現場でどのように使い分けるべきかを紹介します。
マイルストーンとは?
マイルストーン(Milestone)とは、プロジェクトの進行における「通過点」や「到達目標」のことです。もともとは「道しるべの石」を意味し、進捗を確認するための基準点として活用されます。
例えば「6月末までに要件定義を完了」「店舗の建築工事を終了」「採用活動の一次面接を終える」など、日付や状態に結びつく形で設定されます。つまり、マイルストーンはプロジェクト管理における“見える化”のツールなのです。
EOSにおける「石(Rocks)」とは?
一方で、EOSでいう「石(Rocks)」は、90日間で必ず達成すべき最重要目標です。会社・部門・個人ごとに3〜7個の石を設定し、四半期を通じて集中して取り組むことで、組織全体の成長と実行力を高めます。
加えて、石は単なる進捗確認ではなく「行動と成果の約束」です。L10ミーティングで毎週進捗を確認し、四半期末には「完了(Done)」か「未完了(Not Done)」で判定されます。そのため、石は組織を前進させるための具体的かつ強力な仕組みと言えるでしょう。
マイルストーンと石の違い
両者の違いを整理すると次のようになります。
項目 | マイルストーン | 石(Rocks) |
---|---|---|
時間軸 | プロジェクト全体の流れの中のチェックポイント | 四半期(90日)の最重要ゴール |
性質 | 状態の確認(到達点) | 行動と成果(必ず達成する約束) |
使い方 | 進捗を見える化する | 組織や個人の集中すべき優先事項を決める |
管理方法 | ガントチャート・進捗表 | L10ミーティング・スコアカード |
実務での使い分け
例えば、新店舗オープンを例に考えてみましょう。
- マイルストーン:「建築工事完了」「スタッフ採用完了」「プレオープン実施」など進捗のチェックポイント
- 石(Rocks):「採用フローを完成させ、今期10名の応募を獲得する」「査定マニュアルを改訂し、スタッフ教育を仕組み化する」など成果につながる四半期ゴール
なぜ両方必要なのか?
マイルストーンだけでは「進んでいるかどうか」は分かりますが、「優先すべきこと」に集中できません。逆に石だけでは「具体的にどこまで進んだか」を細かく把握できません。
つまり、両者を組み合わせることで、長期の流れと短期の集中を同時にマネジメントできるのです。
さらに実務では、石を達成するためにマイルストーンを「補助ツール」として設定するのが効果的です。
例えば「採用フローを完成させる」という石を設定した場合、スケジュール管理表に「求人原稿の完成」「採用サイトの公開」「一次面接フローの整備」といったマイルストーンを置いておくと、進捗を段階的に確認できます。
このように石がゴールだとすれば、マイルストーンはその道中に設けるチェックポイント。両者を組み合わせることで、目標達成の確実性が高まります。
女性リーダー育成とマイルストーン・石の視点

女性リーダーを育成する場面でも、この違いを理解しておくことは重要です。細やかな進捗管理(マイルストーン)に強みを発揮する一方で、管理職や経営層に近づくと「石(Rocks)」のような大きな優先事項を掲げ、チームを方向づける力が求められます。
そのため、経営者が女性リーダーにこの視点を意識させることで、現場感覚と経営視点を両立できるリーダーを育てることができます。
まとめ|マイルストーンと石を混同しない
マイルストーンと石はどちらも目標管理の重要なツールですが、その役割は異なります。
マイルストーンは進捗の「見える化」、石は組織の「集中力と実行力」を生むものです。加えて、女性リーダー育成の観点からも両者のバランスを理解することが欠かせません。
リーダーや経営者は両者を正しく理解し、適切に組み合わせることで、プロジェクトと組織の両面から成果を最大化できるでしょう。
書籍紹介|『TRACTION』で学ぶ“石(Rocks)”の実践
『TRACTION』は、EOS(Entrepreneurial Operating System)の公式ガイドブックです。本書では「石(Rocks)」をはじめ、L10ミーティングやスコアカードなど、組織を成長させるための具体的なツールが体系的に紹介されています。
マイルストーンがプロジェクトの進捗管理に役立つのに対し、石は組織全体の優先順位を明確にし、実行力を高める仕組みとして解説されています。
女性リーダーがチームを導くうえでも「成果を約束する目標設定」を学べるため、単なる管理にとどまらず、組織を動かすリーダーシップを身につけたい方に最適な一冊です。
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