いつも忘れる成功事例|EOSのプロセスで一貫性を形に

オフィスで微笑む女性リーダー。記事タイトル「いつも忘れる成功事例|EOSのプロセスで一貫性を形に」のアイキャッチ EOSツール実践ガイド

現場では「なぜ必要か」の説明が省かれた指示が意外と多く見られます。特に忙しい上司は、無意識に理由を端折ってしまうことも少なくありません。しかし、この省略が繰り返されると、小さなトップダウンが積み重なり、チーム全体の主体性を奪ってしまいます。

この記事では、EOS(起業家型組織運営システム)のプロセスを活用し、一貫性ある業務の進め方をつくる重要性を解説します。中小企業でよくある現場の「あるある」から始め、デメリットとメリットを整理し、最後に全社視点のコアプロセスまでつなげます。

現場でよくある「理由なき指示」

ある女性リーダーがチームにこう指示しました。「このやり方でやってください」。メンバーは素直に従い、結果は成功。しかし、数カ月後にはその方法が現場で使われなくなっていました。

理由を聞くと「最初に説明がなかったから」「やらなくても困らなかったから」という声。つまり、なぜ必要かを共有しないまま進めたために、成功事例が定着しなかったのです。

小さなトップダウンが積み重なるデメリット

短期的なスピードの裏にある長期的リスク

理由を説明せずに出される指示は、短期的にはスピード感がありますが、長期的にはさまざまな悪影響を生みます。以下は代表的なデメリットと、その現場での影響です。

デメリット現場での影響
指示待ち部下が増える上司の指示が出るまで動かなくなり、「言われたことだけやる」という文化が根付き、チーム全体の自走力が低下する。
思考停止の部下が増えるなぜやるのかを自分で考える習慣がなくなり、判断力や問題解決力が育たない状態が続く。
上司依存が強まる日常的な意思決定が上司に集中し、リーダー層の負担が増加。現場での即応性が失われる。
成功事例が定着しないやり方の背景が理解されず、再現性がないため、せっかく成果が出ても継続的に活用されない。

一貫性あるプロセスのメリット

女性リーダーが推進役になれる理由

プロセスの定着を推進する女性リーダーの画像

一貫性あるプロセスが確立されている組織では、業務が標準化されるだけでなく、目的共有が自然と行われます。特に女性リーダーは共感力を活かして背景や目的を丁寧に伝えることが得意で、プロセスの定着を推進する中心的な存在になれます。

メリット組織への効果
誰がやっても同じ質で進む属人化が防げ、担当者が変わっても一定の成果が再現できる。ミスや抜け漏れが減少する。
目的共有が自然に行われるなぜやるのかが理解され、メンバーが納得して行動できるため、実行力が高まる。
判断のズレが減る業務の判断基準が揃い、部下が自ら正しい判断を下せるようになるため、現場での迅速な対応が可能になる。
教育が早くなる新人や異動者でも迷わず業務を進められ、教育担当者の負担も軽減される。

プロセスを機能させる工夫

日々の運用で意識すべきポイント

  • 手順の中に「目的説明」を明文化し、誰が担当しても必ず背景を共有するようにする。
  • 現場でプロセス遵守状況を定期的に確認し、形骸化を防ぐ。
  • 不足や抜けが見つかったらすぐに更新し、現実に合った形に進化させる文化をつくる。

これらの工夫により、プロセスは単なる手順書ではなく、組織文化の一部として機能します。

全社視点で考える「コアプロセス」

EOSでは全社共通の主要業務フローを「コアプロセス」と呼びます。コアプロセスの特定から文書化、そして仕組み化ができると、組織全体の一貫性が高まり、成果の再現性も大きく向上します。

この考え方は、マイケル・ガーバー著『はじめの一歩を踏み出そう』でも詳しく解説されており、『TRACTION』でも紹介されています。全社的な仕組み化がなぜ重要なのか、その背景と方法が理解できます。

コアプロセスは、インプリメンターと共に作ることで、現場の実態に即しながらも全社的に浸透しやすいものになります。部署や役職の違いを超えて同じやり方で進められるようになり、企業としての成長スピードも加速します。

まとめ

「なぜ必要か」を説明しない指示は、小さなトップダウンの積み重ねになり、やがて指示待ちや思考停止の文化を生みます。だからこそ、プロセスに一貫性を持たせ、目的共有を工程に組み込むことが重要です。

まずは現場単位で、目的説明を含めたプロセスを整備することから始めましょう。その積み重ねが、全社的なコアプロセスづくりへの第一歩になります。

書籍紹介|『はじめの一歩を踏み出そう』と『TRACTION』

『はじめの一歩を踏み出そう』は、マイケル・ガーバーによる中小企業経営の名著です。著者は「優れた職人が必ずしも優れた経営者になるわけではない」という視点から、事業を仕組み化することの重要性を説いています。日々の業務に追われて経営の本質を見失いがちな経営者に、「ビジネスを動かすのはあなた自身ではなく、あなたが作った仕組みであるべきだ」と強く訴えます。この考え方は、EOSにおけるコアプロセスの特定・文書化・仕組み化の流れと重なります。

『TRACTION』は、ジーノ・ウィックマンによって書かれた、EOS(Entrepreneurial Operating System)の公式ガイドブックです。ビジョンの共有、データによる経営、課題解決の仕組み化など、組織を成長軌道に乗せるための実践的なツールが体系的にまとめられています。特に「コアプロセス」の章では、全社で共通する主要業務フローを明確化し、誰が見ても同じやり方で業務が進む状態をつくることの価値が語られています。

2冊とも、「優れた仕組みが優れた組織をつくる」という共通のメッセージを持っています。経営者や女性リーダーが現場に浸透するプロセス設計を行う際の参考書として、非常に心強い存在です。

『はじめの一歩を踏み出そう』―成功する人たちの起業術
マイケル・ガーバー著

『TRACTION』ビジネスの手綱を握りなおす 中小企業のシンプルイノベーション
ジーノ・ウィックマン 著

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