会社の成長を支える「仕組み」を語るとき、必ず登場するのがプロセスとマニュアルです。現場では「プロセスを整備した」「マニュアルを作った」とよく言われます。しかし形だけになり、思うように成果につながらないケースも少なくありません。
一般的に、プロセスは「業務の流れ」を示し、マニュアルは「具体的な手順書」を意味します。プロセスはフロー、マニュアルは操作説明に近い存在です。ただし、どちらも現場レベルにとどまりやすく、全社的な成果の再現には限界があります。
そこでEOS(Entrepreneurial Operating System®)は、この2つを区別します。そしてさらに、会社全体の成功を再現するための「コアプロセス」を重視します。この記事では、プロセスとマニュアルの違いを整理し、EOS独自の視点から成果を再現する仕組み化を解説します。
プロセスとは?
「プロセス」とは、仕事の流れや一連のステップを指します。たとえば営業プロセス、経理プロセス、在庫管理プロセスなどです。部署ごとに存在し、効率化や品質の安定化を目的にしています。
一般的な定義と役割
プロセスは「何を」「どの順番で」行うかを明確にします。個人や部署単位で効率化が進む一方、全社レベルの統一や成果の再現までは難しいのが実情です。
マニュアルとは?
マニュアルは具体的な手順を細かく記した手順書です。たとえば「顧客から電話を受けたら、①お礼を述べる → ②顧客番号を確認する → ③システムに入力する」といった具合です。
手順書としての役割
マニュアルはHOW(どうやるか)を示します。目的は、誰でも同じ手順で作業できるようにすることです。ただし部署単位で完結しやすく、会社全体の成長には直結しません。
プロセスとマニュアルの違いを整理
項目 | プロセス | マニュアル |
---|---|---|
範囲 | 部署やタスクごとの業務フロー | 担当者・部署単位の作業手順 |
内容 | 「何を」「どの順番で」行うか | 「どうやって」具体的に行うか |
目的 | 効率化・品質安定化 | 作業の再現性確保 |
数 | 多数(部署ごとに存在) | 無数(細かい業務ごとに存在) |
課題 | 全社最適につながりにくい | 形骸化しやすく、活用されない |
EOSのコアプロセスとは?
EOSは会社の成功を再現するために「コアプロセス」を導入します。コアプロセスとは、会社全体を動かすうえで欠かせないやり方を6〜10に絞り、文書化したものです。
会社全体の「やり方」を定義する
マニュアルが個別の手順、プロセスが部署単位の流れだとすれば、コアプロセスは会社全体を動かす「幹」にあたります。営業、マーケティング、人事、会計などの基本的なやり方を一本化し、誰もが同じ方法で実行します。
6〜10に絞る理由
コアプロセスは数が多すぎると複雑になり、成果を再現しにくくなります。だからこそ「6〜10」に絞るのです。シンプルにすることで全員が理解しやすくなり、日常の中で迷わず実践できます。
全員が同じやり方に従う
EOSが特に強調するのは、コアプロセスを全員が同じやり方で実行することです。部署ごとに違う方法を使えば、成果はバラつきます。文書化してシンプルにし、全社員が従うことで、成果を安定して再現できます。
インプリメンターと共に作る意義
コアプロセスは会社の「勝ちパターン」を形にする重要な仕組みです。そのため、EOSインプリメンターと共に作ることをおすすめします。外部の視点を入れることで、現場に即しながらも全社に浸透しやすい内容になります。
インプリメンターと進めれば、部署や役職の違いを超えて全員が同じやり方を実行できます。その結果、成長スピードは加速し、女性リーダーを含むすべてのメンバーが安心して成果を再現できます。
成果を再現する仕組み化
コアプロセスの目的は、効率化や属人化の防止だけではありません。成果の再現性を高めることです。誰が担当しても同じ結果を出せる仕組みを持つことで、組織全体の成長が加速します。
プロセス・マニュアル・コアプロセスの違い
項目 | プロセス | マニュアル | EOSコアプロセス |
---|---|---|---|
範囲 | 部署やタスクごとの業務フロー | 担当者・部署単位の作業手順 | 会社全体のやり方(6〜10に絞る) |
内容 | 「何を」「どの順番で」行うか | 「どうやって」行うか | 「会社としてどう進めるか」を明文化 |
目的 | 効率化・品質安定化 | 作業の再現性確保 | 成果を再現し、成長を加速 |
数 | 多数(部署ごとに存在) | 無数(細かい業務ごとに存在) | 限定的(6〜10) |
特徴 | 部分最適に陥りやすい | 形骸化しやすい | 全員が同じやり方で成果を再現 |
女性リーダー育成とコアプロセスの関係
女性リーダーは責任感が強く、つい「全部やらなければ」と抱え込みがちです。その結果、仕事の進め方が属人的になり、本人の負担が増えるだけでなく、チームとしての成果も安定しなくなります。
ここで役立つのがEOSのコアプロセスです。会社全体で「このやり方で進める」と決めて文書化しておけば、女性リーダーが自分ひとりで方法を考えたり、人によってやり方を調整したりする必要がなくなります。つまり、仕組みがリーダーを支え、成果を再現できる環境が整うのです。
また、コアプロセスがあることで、女性リーダーは「本当にリーダーとして必要な判断」や「部下を育てること」に時間を使えるようになります。細かいHOWにとらわれず、成果につながる役割に集中できるのです。
さらに重要なのは、全員が同じやり方で実行するという点です。誰か一部だけが従っても効果は限定的です。会社全体が一枚岩となり、女性リーダーも部下も同じ方向で動くことで、安心感と成果の両方が得られます。
ポイント:コアプロセスは女性リーダーに「全部自分で抱え込まなくていい」という安心感を与えます。仕組みに沿って進めるだけで成果が出せるため、リーダーとして自信を持ち、次の挑戦に踏み出しやすくなります。
まとめ|仕組み化が女性リーダーの成長を後押しする

プロセスとマニュアルは業務を効率化するうえで欠かせない仕組みですが、現場にとどまりやすく、会社全体の成果を再現するには限界があります。EOSが重視するコアプロセスは、会社全体の「やり方」をシンプルに統一し、誰がやっても同じ成果を出せるようにする仕組みです。
とくに女性リーダーにとって、コアプロセスは大きな支えになります。なぜなら「全部自分で抱え込まなくてもいい」という安心感を与えてくれるからです。仕組みに沿って進めれば成果が再現できるため、余計なストレスや不安から解放され、リーダーとして本来の役割に集中できます。
さらに、コアプロセスの価値は全員が同じやり方で実行することにあります。一人の努力に頼らず、組織全体で共通の「勝ちパターン」を持つからこそ、成果が安定して積み重なります。ここでインプリメンターと共に作ることで、現場に即した内容を持ちながら、全社に浸透しやすい仕組みに整えられます。女性リーダーも安心して挑戦できる環境が整い、次のステージへ進みやすくなるのです。
メッセージ:女性リーダーが成長するためには、精神論ではなく「成果を再現する仕組み」が必要です。EOSのコアプロセスは、その仕組みを会社全体に浸透させ、リーダーが安心して挑戦できる環境をつくります。勇気を持って仕組みを整えることが、組織の未来を変える第一歩になるのです。
書籍紹介|EOSを深く学ぶ一冊『TRACTION』
この記事で紹介した「プロセス」「マニュアル」、そして「コアプロセス」は、すべてEOS(Entrepreneurial Operating System®)の中で体系的に整理されています。これらをさらに深く学び、実践に落とし込むための公式ガイドブックが『TRACTION』です。
『TRACTION』では、L10ミーティング(10点満点ミーティング)、石(Rocks)、スコアカードといったEOSの主要ツールが具体的に解説されています。女性リーダーを含むすべてのリーダーが「完璧主義から前進主義」に切り替え、仕組みを武器にして成果を出せるようになるためのヒントが満載です。
特にコアプロセスの章では「全員が同じやり方で実行する」ことの重要性が繰り返し強調されています。さらに、インプリメンターと共にコアプロセスを設計することの価値にも触れられており、現場の実態に合いながら全社で成果を再現する仕組みを整えるヒントが得られます。
チームの成果を安定的に再現したい、リーダー自身の成長を仕組みで支えたいと考える方に最適な一冊です。
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ジーノ・ウィックマン 著
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