“価値観”を大事にし”原理”を運用|EOSで強くする「組織運営」

価値観と原理を運用しEOSで強い組織をつくる組織運営のイメージ EOSツール実践ガイド

組織が迷い続ける原因は、「価値観」と「原理」を混ぜて使ってしまうことにあります。

価値観(Value)は、どんな姿勢で働くか、どんな人と働くかを揃えるための基準です。一方で、日々の判断や役割、数字、仕組みを揃えるのは、誰にでも当てはまる「原理(Principle)」の役割です。

この二つを同じものとして扱ってしまうと、判断がぶれ、例外対応が増え、組織は徐々に疲弊していきます。

EOS(Entrepreneurial Operating System)は、「価値観で人を揃え、原理で組織を動かす」という考え方を軸に、ビジョンと実行をつなぐための実践的な組織運営のOSです。

本記事では、価値観と原理の違いを整理しながら、EOSがそれらをどのように組織運営へ落とし込み、なぜ組織の強さにつながるのかを解説します。

EOSとは?
経営者やチームが「ビジョンを明確にし、実行を仕組み化する」ための実践的システム。
EOSを導入することで、組織は“やるべきこと”に集中し、健全な意思決定と実行の一体化を実現できます。

価値観は組織運営の“出発点”であり、文化をつくる最も重要な要素

経営は突き詰めると「誰と働くか」に行き着きます。どれだけ優れた戦略や仕組みを持っていても、価値観の合わない人が一人入るだけで、組織文化は簡単に濁ってしまいます。

だからこそ、価値観は“軽い言葉”ではありません。価値観こそ、組織文化の土台であり、メンバーが共通して持つ「心の基準」です。この基準が揃っていなければ、どれだけ原理を整えても組織は前に進みません。

まずは、価値観の本質的な重要性から整理していきます。

価値観は「どんな人と働くか」を決める“最初のフィルター”

価値観とは、スキルや経験よりも前に、「この人と一緒に働けるか」を判断するための基準です。仕事の進め方に違いがあっても、価値観が合っていれば、判断に迷ったときも同じ方向を向きやすくなります。

価値観がそろった組織では、「どう振る舞うか」「何を大切にするか」が自然と共有され、チームの空気が整います。

安心して意見を出し、挑戦できる土台が生まれるのです。

反対に、価値観が合わない場合、能力が高くても違和感が積み重なり、判断や行動のズレとして表面化します。だからこそ価値観は、組織文化を守る最初のフィルターになります。

しかし、価値観は「進み方」までは決めてくれない

価値観は「どんな姿勢で働くか」を揃えてくれますが、「どう判断するか」「何を優先するか」「役割はどこまでか」といった具体的な実務ルールまでは決めてくれません。

そのため、価値観が揃っていても次のような問題が起きやすくなります。

  • 判断基準が人によってバラバラになる
  • 優先順位のズレが起きる
  • 役割の境界線が曖昧になる
  • 「例外対応」が増えて現場が疲弊する

ここで必要になるのが、誰にでも当てはまり再現性のある「原理(Principle)」という視点です。価値観が揃っているからこそ、原理が最大限に力を発揮します。

原理(Principle)は“誰にでも当てはまる普遍の法則”

価値観が「誰と、どんな姿勢で働くか」を決めるものだとすれば、原理(Principle)は「どう判断し、どう進むか」を支える土台です。

原理とは、特定の業種や文化に依存せず、状況が変わっても機能し続ける“普遍の法則”です。感覚や好みに左右されず、繰り返しても同じような結果を生み出す再現性のある考え方と言えます。

組織運営において、この原理を理解し、日々の判断に使いこなせるかどうかが、「迷いやすい組織」と「軸のある組織」の分かれ道になります。

原理とは「人や状況が変わっても成り立つ法則」

組織で繰り返し起こる問題には、必ず共通する原因があります。それが「原理」です。人や規模、業種が変わっても、原理を無視すれば同じ課題は何度でも現れます。

これは特定の会社の問題ではありません。原理を無視した運営を続ければ、誰がリーダーでも同じ問題が再発します。だからこそ、原理に立ち返る視点が欠かせないのです。

原理で判断すると、組織は感情に振り回されにくくなる

原理に基づいて判断することで、「好き・嫌い」やその場の雰囲気に左右されにくくなります。「この人がどうか」ではなく、「この状況ではどの原理に立てばよいか?」という視点を持てるようになるため、公平性と納得感が高まります。

感情で判断した場合原理で判断した場合
判断が人によって変わる同じ基準で判断できる
説明が曖昧になりやすい判断理由を言語化しやすい
不公平感が生まれやすい納得感が高まりやすい
その場の雰囲気に流される仕組みやルールを見直す基準が明確になる
表2:感情判断と原理判断の違い

原理を使うことは、「冷たくなる」ということではありません。価値観で“心”を大切にしながら、原理で“判断”を揃えることで、むしろメンバーにとって安心感と納得感のある運営がしやすくなります。

EOSは「価値観」と「原理」をどのように組織運営へ落とし込むのか

価値観と原理をもとにEOSで組織運営を説明するミーティングのイメージ

ここまで、価値観(文化)と原理(法則)が組織にどれほど大切かを見てきました。しかし、多くの企業では「価値観は掲げて終わり」「原理は理解しているつもり」になりがちです。

そこで力を発揮するのが EOS(Entrepreneurial Operating System) です。EOSは、価値観と原理を“言葉のまま”にせず、組織が実際に運用できるよう仕組み化するOS です。

EOSは、抽象的な「理想論」とは異なり、文化・仕組み・実行の3つを同時にそろえるために設計されています。

価値観(Core Values):誰と働くかを決める「文化の核」

EOSにおける価値観(Core Values)は、単なるスローガンや理想像ではありません。「誰と働くか」を決めるための明確な基準であり、組織文化の中心となる考え方です。価値観は、日々の行動や判断の土台となり、チームがどんな姿勢で仕事に向き合うのかを形づくります。

価値観が明確な組織では、「この判断は自社の価値観に沿っているか?」という問いが自然と生まれます。その結果、細かなルールを増やさなくても、行動の方向性が揃い、判断の迷いが減っていきます。

また、価値観は採用や育成の基準としても大きな役割を果たします。価値観に共感し、体現できる人が集まることで、文化が強化され、無理に引き締めなくてもチームとしての一体感が生まれます。反対に、価値観が合わない場合、能力が高くても長期的には組織に負荷をかけてしまいます。

価値観は、「何をするか」以前に、「どんな人と、どんな姿勢で働くか」を決める文化の核です。EOSでは、この価値観を起点にしてこそ、原理や仕組みが機能すると考えます。

原理(Principles):組織の行動を揃える“普遍的な法則”

原理とは、どんな組織にも共通して当てはまる働きのルールです。EOSはこの「原理」を具体的な仕組みに変え、組織全体で再現できるようにします。

原理EOSが実現する状態
期待は明確であるべきアカウンタビリティチャートで役割・責任が明確になる
数字は現実を映す指標スコアカードで“事実”を見て議論できる
問題は隠さず扱うべきIDSで問題を確実に解決へ導く文化が定着する
継続的な実行が成果を生むL10ミーティングで実行が毎週積み上がる
表2:原理を組織で再現可能にするEOSの仕組み

EOSは「原理を理解して終わり」ではなく、行動レベルで再現できるように仕組みに変換するシステムです。

健全性(Healthy):文化と原理を実際に“機能”させる土台

価値観がそろい、原理が明確でも、チームが健全でなければ組織はうまく機能しません。EOSにおける健全性とは、文化や仕組みを「現実の行動」につなげるための土台です。

EOSが重視する健全性は、単なる仲の良さや雰囲気の良さではありません。率直に話せるか、問題を隠さず扱えているかといった、チームの“状態”そのものを指します。

不健全なチーム健全なチーム(EOSが目指す状態)
本音を言いづらい空気がある率直に意見を出せる
問題が先送りされがち課題がすぐ話題に上がる
責任の所在が曖昧役割と責任が明確
判断が感情や立場に左右される原理に立ち返って判断できる
価値観やルールが形骸化している価値観と原理が日常で機能している
健全性は、価値観と原理を「実際に機能させる状態」である

チームが不健全な状態では、本音が出ず、課題は先送りされ、せっかく定めた価値観や原理も「きれいな言葉」で終わってしまいます。

一方で健全なチームでは、問題が起きたときにすぐ話題に上がり、原理に立ち返って解決を考えることができます。だからこそEOSは、仕組みと同時に「チームの在り方」を重視しているのです。

まとめ|価値観と原理を使い分けることが、強い組織をつくる

組織運営で重要なのは、「価値観」と「原理」を混ぜずに使い分けることです。価値観は人と文化を揃え、原理は判断と行動を揃えます。

多くの組織は、この二つを感覚で扱うことで、判断のブレや例外対応を増やしてしまいます。その結果、現場もリーダーも疲弊していきます。

EOSは、価値観と原理を理解で終わらせず、仕組みとして運用するためのOSです。人・判断・実行を揃え、組織が自然と前に進む状態をつくります。

価値観で人を揃え、原理で判断を揃え、健全性でそれを回し続ける。この視点を持つだけで、組織の見え方は大きく変わります。

書籍紹介

『TRACTION』は、EOS(Entrepreneurial Operating System)を体系的に学べる公式ガイドブックです。価値観(Core Values)で「誰と働くか」を揃え、役割・数字・会議・課題解決を仕組みで整えていく流れが、具体的に解説されています。

「価値観と原理を分けて運用する」と言われても、現場でどう落とし込めばいいかは迷いやすいものです。本書には、アカウンタビリティチャート、スコアカード、IDS、L10ミーティングなど、原理を“行動レベル”に変える道具が揃っています。組織の判断と実行をシンプルにしたい経営者・リーダーにおすすめの一冊です。

『TRACTION』ビジネスの手綱を握りなおす 中小企業のシンプルイノベーション
ジーノ・ウィックマン 著

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