女性活躍推進が叫ばれて久しい現在、多くの企業では女性の採用や昇進に関する制度整備が進められています。しかし実態を見ると、「能力は高いのに管理職を希望しない女性」が一定数存在し、企業側も「登用したくても候補がいない」という課題に直面しています。
この現象は中小企業に限らず、大手企業でも広く見られる傾向であり、女性のキャリア形成や組織の多様性推進に大きな影響を与えています。本記事では、女性が管理職を望まない背景とその理由、そして企業が取るべき対応策について、表を交えながら詳しく解説します。
女性管理職比率の現状
政府は女性管理職比率の向上を目指し「2030年までに30%」という目標を掲げていますが、2024年時点でもその達成は遠い状況です。
企業規模 | 女性管理職比率(平均) |
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大手企業(従業員1000人以上) | 約8〜15% |
中小企業(従業員300人以下) | 5〜10% |
この数字からは、制度が整っていても、女性自身が「管理職になりたい」と思える環境や動機が不足している現実が読み取れます。
女性が管理職になりたがらない主な理由
「昇進意欲の欠如」という表面的な言葉では捉えきれない、さまざまな背景があります。
理由 | 具体的な背景・課題 |
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ワークライフバランスへの懸念 | 「昇進=残業や転勤の増加」と捉えられ、家庭や子育てとの両立が難しくなると感じる |
ロールモデルの不在 | 身近に働きながら輝く女性管理職がいないため、自分が目指すイメージが湧かない |
自信の欠如(アンコンシャス・バイアス) | 「自分には責任が重すぎるのでは」と無意識にブレーキをかけてしまう傾向 |
組織文化とのギャップ | 未だに男性優位な文化やハラスメントが残っており、管理職として働くことに不安を感じる |
企業が取るべき対応策
女性が自らリーダーシップをとりたいと思える環境を作るには、制度整備だけでなく、文化や意識改革が必要です。
1. 柔軟な働き方と役職の両立支援
- 時短・在宅勤務でも管理職として活躍できる制度設計
- チームリーダーやプロジェクト単位でのマネジメント経験の場を提供
2. 女性向けキャリア研修とメンター制度
- 管理職登用に向けたスキル・マインドの強化研修
- 先輩女性リーダーによるロールモデル共有と伴走支援
3. 昇進意欲を後押しする仕組み
- 定期的なキャリア面談で「管理職としての可能性」を言語化し、明確にする
- 昇進後のフォロー制度(業務調整・メンタルサポートなど)の整備
4. 組織文化とリーダーシップ像の見直し
- 「声の大きさ」ではなく「チームを活かす力」を評価するリーダー像の再構築
- 無意識バイアスの研修導入と、評価制度の透明化
女性リーダーが増えることの効果

企業にとって、女性管理職を増やすことは単なる数合わせではありません。以下のような好循環が生まれます。
- 多様な視点による経営判断の質向上
- 女性社員のモチベーション向上と離職防止
- 社会的評価やブランド力の強化(SDGs対応、ESG投資への好影響)
また、女性にとっても「上を目指してもいい」と思える風土が形成されることで、企業内におけるキャリア選択の幅が広がります。
まとめ:意欲の欠如ではなく、環境の不備が原因
女性が管理職を「望まない」と見える背景には、さまざまな構造的・心理的障壁が存在しています。それは「意欲の問題」ではなく、「選択しにくい環境」が原因であることが多いのです。
企業は制度を整えるだけでなく、女性が安心して挑戦できる土壌を作る必要があります。真の多様性推進とは、誰もが「自分らしく挑戦できる」環境づくりに他なりません。