ダイバーシティ経営が求められる今、女性リーダー育成は企業の持続的成長に直結する重要なテーマとなっています。とはいえ、属人的な育成や精神論では、再現性がなく長続きしません。ここで活用したいのが、組織運営の枠組み「EOS(Entrepreneurial Operating System)」です。
本記事では、女性リーダー育成の意義を再確認しつつ、EOSを活用した構造的な支援施策、育成に成功している企業の取り組みをご紹介します。
1. なぜ女性リーダー育成に「構造」が必要なのか
属人的な育成の限界
日本ではいまだに「リーダー=男性」のイメージが根強く、女性管理職比率は約15%前後にとどまっています。育成しようにも、社内ロールモデルの不在や“育てる側”の準備不足がボトルネックとなりがちです。
EOSが提供する“構造”とは?
こうした状況において求められるのは、属人的な育成ではなく、構造で支える仕組みです。EOSでは、「明確な役割の設計」「定期的な評価」「数字による可視化」といった枠組みで、育成の土台を支えます。
構造の要素 | 概要 | 女性リーダー育成での活用例 |
---|---|---|
アカウンタビリティチャート | 役割と責任の明確化 | 「誰に任せるか」が明確になり、育成対象者に経験を積ませる機会をつくれる |
スコアカード | 数値での行動管理 | 目標設定・振り返りがしやすくなり、成果に向けた主体的行動が促される |
LMA(Lead・Manage・Accountable) | リーダーの基本行動 | 育成段階に応じて必要なサポート内容を整理できる |
石(Rocks)/四半期目標 | 優先順位の明確化 | 一歩ずつ成果体験を積み上げるための小さな挑戦の設計ができる |
ミーティングのリズム | 定例会議による進捗確認 | 「見守り」「支援」「問いかけ」が定期的にできるため、成長を後押しできる |
図:EOSが提供する“構造”の要素と、女性リーダー育成における活用法
2. EOSを活かした育成支援の具体策
具体的な支援施策
- アカウンタビリティチャート:責任と役割を可視化し、任せる文化をつくる
- LMAを実践する上司の育成:「育てる力」があるリーダーが育成の鍵
- スコアカード活用:数字で努力と成果を可視化。自信と信頼を両立
制度にしない“育てる文化”
これらの施策を「女性枠」として設計するのではなく、すべての従業員に適用可能な仕組みとすることで、公平性や多様性を支える文化が醸成されます。
3. 成功事例に学ぶ:構造で育てた企業の取り組み

プロジェクト責任者として活躍する時短女性管理職
ある中堅企業では、「スコアカード」と「アカウンタビリティチャート」の導入により、子育て中の女性がプロジェクト責任者として活躍。評価は成果に基づき、時間の制約が昇進の妨げにならない文化を実現しています。
“育てる上司”を可視化したLMA運用の例
別の企業では、LMAの導入により「女性メンバーを育成できる上司」を定義し、ロールモデルの不在を“育成の関係性”で補完しました。これにより、若手女性社員の定着率と自己成長意欲が大きく向上しています。
4. 育成文化を支える「日常」のEOS活用
EOSには、「明確な方向性を示す」「必要な道具を提供する」「率直に話す文化をつくる」など、育成を構造化・習慣化するための要素が備わっています。
これらは一度の制度導入ではなく、“毎週の会議”や“日々の対話”を通じて育まれるものです。女性リーダーを育てる文化も、こうしたEOSの運用の積み重ねから生まれます。